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Vol.18 「表具師」の北村さん Vol.17 指宿紬 ~上原達也さんの仕事~
Vol.16 飯田紬を訪ねて~廣瀬染織工房~ Vol.15 きものを大切に守る仕事 ~シミ抜き・洗張りの職人~
Vol.14 『型染め』その2 Vol.13 ひとを育てる ~電気屋さんと幸之助さん~
Vol.12 受け継がれてゆく能登上布 Vol.11 畳のはなし
Vol.10 木版染めの技師と悉皆屋 Vol.9 土佐手縞 福永世紀子さんの織物
Vol.8 結城紬の糸の源 Vol.7 勝山さんの帯
Vol.6 上原美智子さんの織物 Vol.5 西陣のこと
Vol.4 「型染め」の魅力 Vol.3 現代の染織と魚座のこと
Vol.2 赤の帯 染織家Aさんの帯 Vol.1 築城則子さんの仕事 小倉縞


「型染め」の魅力

単純な疋田文様を描く小紋だが、奥行きのある疋田を表現するため6枚の型をまったくずらさずに順番に染めていく。1反でおおよそ130回、寸分の狂いもなく定めていく作業。

細かい点によって槍梅が描かれている小紋。型を彫る職人にも極めて高度な技術が求められる。染める際に用いられる糊の管理も熟練したものにしかできない。

この鮮やかさ大らかさも型染めの魅力だ。太い線のなかに微妙な色の違いがある。意図してこうした染めの不均一を表現するための別の型を用意する。

もっとも複雑な型友禅といってよいだろう。多彩であり細かな描線が多いため30枚~40枚ほどの型を用いる。一反では900回も型を置いていくことになる。正確なわざと集中力が求められる。

この繰り返しのリズム感も型染めの魅力だ。おもわず微笑んでしまう可愛らしさ。

きものや帯を染める技法のひとつに「型染め」と呼ばれるものがある。
文様や色を生地に表現する方法は、生地に絵の具と筆を使って手描きする方法もあり、「手描き友禅」などという表現に対して「型友禅」と呼ばれることも多い。

この「型染め」のきもの、私たちは好きなのである。「型染め」によって染められたきものや帯は他にはない不思議な魅力にあふれているようなのである。

「型染め」というのは文様の型を作ってそれに従って染めるものなので、筆などを使った手描き染めほどの自由さはない。また文様の型を繰り返し使うので、きものなり帯の一つの生地には同じ柄、パターンがいくつも現れる。あるいはその型にも表現できる太さや細かさなどに制限がある。こうした制約に縛られた中で作り出す布は、才能あふれた天才たちが絵筆をふるったものではないかもしれない、また、抜群の色彩感覚を持つクリエーターたちによるものではないかもしれない。が、そこには染め人による自由な表現が少ない中で、若い時分よりたたきこまれ、繰り返し、愚直なまでに正確に繰り返してきた技が宿ってる。

そこにはコンマ数ミリのずれも許されない厳しさがある半面、ある種の遊び、意図をもった「ずらし」、や形状のくずしがあったりする。そんなところにわれわれは染め人の手のぬくもりを感じ、美しさを感じる。一方でそれは技術の未熟さと紙一重でもある。それをいい染め、に見せるのはなにゆえであろうか?

わたしはそれは、染め人が毎日の仕事の中で積み上げてきた少しずつの丁寧さであるように思う。たとえば、少し地味な例だが、型染めは長い板に生地を固定させて染める。すると染める生地の薄い厚いによって、染めた後、その板に染料が微妙に残ることがある。これをきちんと洗浄しておかなければ次に染める反物に影響がでてしまう。この板の洗浄をどれだけきちんとしておくか?
「そんな程度はあたりまえだっ!」ってしかられそうなのだが。

毎日、毎日、積み重ねてきた小さな丁寧さが本当の魅力ある「型染め」を生み出す仕事につながっている、だからこそ他の人がまねしても決して追いつけない。とりわけ我を殺すことも必要とされる「型染め」にはそれを強く感じる。

柄と地色の間に防染のりのあとがないため表現が力強い。隣り合う色の対比も思い切った表現ができる。

単純さを明快にしていくさっぱり感。しかし、よくみるとぼかしであったり一つ一つの文様に変化があり手技の奥行きが見事な型染め。